西村晃『速効!ケータイ仕事術』成美堂出版〔2006.?〕

  企業の中でスタッフ的な仕事をしています。結局、なにか課題を与えられてこなすか、提案を作るというのが仕事になります。工程を決めて、情報を集めて、情報を加工してということになります。そして、ある程度の提案を形にするとか課題を解決する、という実績を積み重ねないと、次のオファーは来ない、というのが世の常です。まあ芸人のようでもあります。

  そういう観点からみると著者のマインドには共鳴しました。「それでもひるまず、私は提案を出し続けた。(中略)毎度毎度叩かれていれば、次第に提案者の書き方も上達してくるものである」(p.214)この志は同じです。

  志は同じですから、この方の手法論は勉強になります。たぶん著者の趣旨としては、ケータイを仕事をつかっているぞ、という本ですね。基本的にはすきま時間を活用できるのがケータイのメリット。このへんの使い方については私も同じようなことをしていました。ああ、同じような必要を持たれた方がおられるのだなあ、と安心致しました。

  私にとっては、とても勉強になったのは、ケータイのくだりではなくポストイットのくだりです。ポストイットのことは、この本ではどちらかといえば副次的な取り上げ方で書いてあります。でも、このくだりは本質的です。御主張はポストイットを用いたカンバン方式のようなことです。

  私はとても反省しました。どうしても私はゆきあたりばったりというところがある。きっとザルのようにやるべきことが落ちているのだろうなあ、と思った次第です。生産管理の分野でいうところの作業展開、オーダ発行、作業指図書、カンバンというところですね。そしてポストイットはまさにカンバンですね。私のようにカンバン無しで仕事をしているということは、まだまだ稼働率が低いということなのだなあと反省しました。

  著者のカンバン方式のようなポストイットの使い方はとても参考になります。「私にとって『仕事をする』ということは、手帳の『ポストイット』を1枚づつはがしては捨てていくということなのである」(p.172)

  「手帳という台紙の上で『ポストイット』は『大至急』『今日中』『今週中』と分かれ、しかもそれぞれ優先順に並んでいるが、この順番もたえず変わるものである」(p.173)

  おお、差し立て板の上でのカンバンの入れ替えですね。製造業の生産管理に携わった者にとってはとても同意致します。

 
   さらに『ポストイット』は情報の収集手段にもなることが書いてあります。情報の集め方もまたホントに著者の方に同意致します。「本当に大切な情報は自分で集めるしかない。しかもそれは、多くの人が見逃している日常の中に潜んでいる」(p.216)「あなたのビジネスに必要なデータは、あなたが自分の足と目、耳を使って集めるしかないのである」(p.223)そして、ポストイットは録音よりもモブログよりもコストが安いというわけです。「必要な情報を収集したらどんなものでも『ポストイット』に一元化するという約束にしてある」(p.180)

  私の場合の悩みはポストイットそのものがすぐに洪水のように多数になってしまって、結局活かせないというリスクもありそうだ。『ポストイット』の洪水はどうすれば良いのだろうか。ここからは自分で考えることに致します。

  とにかく、ここまで連れてきてくれた著者には大変感謝もうしあげます。