南淵明宏『僕が医者を辞めない理由』羊土社〔2005.6〕

 南淵明宏『僕が医者を辞めない理由』羊土社〔2005.6〕を読みました。

 超一流の職業人の現役バリバリの方、プロのプレーヤーはとてもお忙しいはずであります。だから通常はなかなかそういう方は本など書いてくれないのではないものだろうと思います。著者南淵氏は現場の手術という逃げも隠れもできない現場でプロとして活躍されている心臓外科医でありながら、このような本を書いて下さったということでありまして、まず、この点を感謝申し上げたいです。

 ここで語られているものは職業観というようなことであります。話題は当然、医者の世界のことであります。しかし、これは医に携われている方々だけの話ではないと思いました。広く、問題解決に携わる職業人の考え方、行動の仕方は共通するものであると確信しました。

 とても歯切れが良く明確なメッセージを受け取りました。「現場に立つものがプロ」であり、医局に代表されるような権威やら序列やらはニセモノである、これらは患者の役にたたない、ということですね。で、そういうニセモノは見ていておかしいじゃねえか、おかしいよ。と。笑えるエピソードも多く語ってくれます。で、プロはこうあるべきだと著者「僕」は思っていると。で、そうすることが、せっかく生まれてきた意味じゃねえのかよ、と。そのように読めます。そのように語ってくれている本であると受け止めました。

 読者私もやはりそのような職業人でありたいと思う一人でありますから、著者のメッセージを上記のように受け止めさせていただきました。とても啓発された次第であります。
  
 ただ啓発してくれるだけではなく、この上なく楽しい本です。何回も笑いました。雄弁な方が猛スピードで、当為即妙に、それでいて深い含蓄のあるトークをされているような本であります。