増田悦佐『高度経済成長は復活できる』文春新書[2004.7]
 
 名著。日本国破産とか国家破産後の日本といった本は読んだことがある。ドルで預金しろ、いや封鎖されるから意味がない、とどちらかといえば対策面の本(金持ちでないと対策は打てないが)はよく見かけます。一方で、この本はその原因は何か、誰のせいなのか、という本。それを解明するために書かれた本というわけです。

 本書によれば、原因は田中角栄のせいだ、ということだ。なるほど。官僚と田中角栄がここから提携したわけだ。この時代に赤字財政での無駄が決定的になったわけだ。これを社会主義政権だと捉えている。

 この視点は凄い。歴史書だ。

 本書を読むと、彼が「ひがみを煽る」、「弱者を偽装する」、「弱者を作りこむ」等、そういう定石をたしかに踏んでいった人だということに納得する。しかも、彼は実行の人だから、実行した。それは確かだ。実行したのでおそろしい赤字経営にしてしまった。

 この解明だけで凄い。この困難を克服するには逆をやればよいのだろう。